


醸造所へお越しくださった方へのお礼
2015年、周防大島の土地柄が穏やかで温かな油良という地域に、初めてのぶどう畑を作ることができました。
山梨の大学で学び、富良野、中伊豆と約20年間ぶどう栽培とワイン醸造の経験を積み、この土地でワイン農家としての第一歩を踏み出そうと移住したのが2013年のことです。そして、2018年、同じく周防大島油良に自ら設計した理想どおりの小さな醸造所ができ、100%油良の自社農園で栽培したぶどうを使ってワインをつくっています。
仕事の日という概念はなく、日々の生活の中にぶどう作りがあり、そしてワインを醸造する。つまり、私たちの形態は、ワイナリーと言うより、ワイン農家という言葉がぴったりだと思っています。
袋がけに記した詩は、私たちのワインづくりの哲学です。
ワインは言わば農作物であり、一年の大半をぶどう栽培に費やし、コツコツと畑に足を運んでぶどう達と向き合うことが最も重要な仕事になります。ぶどう栽培は、子育てとよく似ています。毎年成長する我が子達を見守るように、その年々の物語が記憶のアルバムに刻まれています。ぶどうは子供と同じ、初めて収穫した樹齢5年そして6年と重ねて行くヴィンテージで愛おしさに甲乙などは付けられず、大切に、でも甘やかさず、全てのぶどう達が元気で素直に育つように、そして最良の状態で収穫ができるようにと沢山の愛情を注いでいます。振り返れば、どんな出来事も笑顔で語れる愉快な思い出ばかりです。また、ぶどうの成長と共に新たな気づきや発見があり、私たちも親としてワイン農家として成長できる喜びを感じています。
一年に一度だけ実るぶどうは、それぞれの年ごとに良さがあります。年々で気象条件も異なれば樹齢も違い、まだ若い樹もやがて老いた樹となりますが、そのぶどうの個性に出会えるのは一度きりですから、特徴をありのまま最大限に引き出したワインとなるように、ぶどうに合わせて造り方を選びます。
生産性や流行を求めて生まれた過剰な醸造技術を使うことはせず、昔からある伝統的な技術を基に、自らの経験で得た知識と感性を駆使して各作業のタイミングを測り、丁寧に何よりも衛生管理に細心の注意を払いつつ、心は躍り楽しみながらワインを醸造しています。
開栓は普段はもちろん色んな場面で、喜怒哀楽その時のお気持ちで、どうぞご自由に感じてお飲みください。そのひとときに、私たちのつくったワインが御一緒させていただけることを心より感謝申し上げます。そして、一人でも多くの方に、再びドメーヌ ピノ・リーブルのワインとの出会いを望んでいただけたら幸いです。
最後になりましたが、本日はお越しいただき誠にありがとうございました。
今日の記念に、この春剪定したぶどうの枝を小箱に入れてお渡ししました。ぶどうが冬の休眠から目覚める前に、前年に伸びた枝から新芽を出させる枝を選び出し、残りの9割は切り落としてしまいます。落とした枝は土に還ることで次なる恵みを生む役割を果たしておりますが、その中から小さな芽を持つ小枝に新たな役割を託しました。皆さまの心の中で芽を出し花を咲かせぶどうが実り、さて次はどんなワインに出会えるかなと思い巡らせていただけますように、またお会いできますようにと願いを込めて。