夏至を迎え、ようやく本格的な梅雨に入りましたが、油良のぶどう畑は相変わらず大賑わいです。清明から動き出した新芽はグングンと成長して、新梢は約65日で私の身長を超えました。今はハサミを持ってバンザイをした位置で先端をカットしていく摘芯作業の毎日です。そして、ブドウの相棒でもある下草たちもこの時期は活発ですので管理を怠りません。
さて、先日から2024期のメンバー募集が始まりました。今回から待望のDPLが登場することになりますが、新しいメンバーの方をお迎えできる喜びと、継続して応援してくださるメンバーの方々には何より深く感謝をして、着実に準備を進めているところです。
そしてこちらも、念願の『ドメーヌ ピノ・リーブル ブラン 2022』をいよいよ蔵出しします。
ワイナリー設立当初の私は、周防大島油良では白ワインを作らないと決めていました。それは、以前のワイン製造者の私に求められていたのは、白ワインと言えば、テリが輝き透明度が高く渋みがない商品作りでした。そのため、過度な清澄・ろ過作業等の工程が多岐にわたることでワインに負担がかかり本来のぶどうの個性を削いでいる感覚が固定観念としてありました。
そこで、ぶどうの特長をすべてワインに反映させるには健全なぶどうを全房発酵で手仕込みすることが理想だと考えた時、白ワインを作らない選択をしました。しかしながら、ヤマブランはヤマソービニオンとともに恩師の山川先生のもと学生時代から愛着のあるぶどうです。ヴィニュロンヌの強い希望もあり、ごく少数ですがヤマブランの栽培を2018年から開始しました。
栽培面では両親が黒系品種であることから成熟期でも酸が高いため収穫適期が栽培者によって大きく異なり、醸造面ではアロマティックで潜在能力が非常に高いことからもとても興味深い品種です。
このヤマブランを周防大島油良で栽培し成長過程を観察していくうちに、私の中で一般的な白ワインではなく「ヤマブランで赤ワインを創る!」という意思が固まりました。つまり、それは白品種のヤマブランを本来は赤品種でおこなう全房かもし発酵で仕込むということです。そのイメージを確立させるために、これまでアンバーやミュスカアンバーなどのワインをつくってきました。そして、2022年にようやくヤマブラン単一で全房かもし発酵をすることができました。初々しい樹齢4年生ヤマブランは華やかな果実香とハツラツとした酸味が特徴的で、まだまだライトでシンプルな香味ですが、その奥に魅惑的な要素を多く含んでいます。
今後もじっくりとぶどう樹の成長を見守りながら、将来は第二のフラッグシップとなるよう構想を練っていますので、先ずはこのファーストヴィンテージから、毎年の進化を一緒に想像していただけると嬉しく思います。
★ドメーヌ ピノ・リーブル ブラン 飲む直前の一口アドバイス
飲み手の方は、白ワインの感覚で口に含むと予想を裏切られるでしょう。
白ぶどうだから白ワインであるという固定観念を無くし、目を閉じ、ゆっくりと香り、じっくりと味わってみてください。
[ ヤマ ブラン ( Yama blanc ) ]
ヤマブドウを母親としピノノワールを父親とした交雑実生株を「戻し交雑」の父親(花粉親)として、ピノノワールに交配した実生株から栽培性に優れワインの品質が優秀と思われる株を選抜して得られた白ワイン用品種。ヤマソービニオンと同様に山梨大学山川教授が開発された最高傑作で、1978年から23年を要して2000年に登録認可(第8290号)された。
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