ドメーヌ ピノ・リーブル
2018
周防大島の油良地区で植栽4年目となるぶどう樹は、2018年約700キログラムの実をつけました。まだまだ未熟な樹ですから、粒が大きく大柄な房や小粒で小柄な房など個体差があり、成熟までの時間が早いものもいればゆっくりのものもいる。けれども猛暑の夏も何のその、どの実もその葉に日の光をいっぱい浴びて、元気にすくすく成長する様は何とも愉快で頼もしく、樹の様子に気を配りながら全ての果梗が熟すまで見守り応援。その収穫と醸造所の完成をワクワクドキドキしながら待ちました。そして遂に、9月14日から23日まで順次ぶどうの収穫と仕込みです。ぶどうは房ごとオーク樽とステンレスタンクへ、ゆっくり発酵を始めました。粒が梗から離れ発酵が進み、大小個性あるぶどうたちは一致団結、豊かな風味を感じるワインとなりました。ここにDomaine Pinot Livreのファーストヴィンテージ誕生です。
ドメーヌ ピノ・リーブル
2019
植栽5年目の春、えんぴつ程のちっぽけな苗から育てたぶどう樹は、いきいきと立派に成長し生命力に満ち溢れているご様子。前年に伸びた枝の9割を剪定して充実した母枝を一本だけ選び、そこから新芽を出す長梢仕立てを施し萌芽を待ちます。時を同じくして、醸造所横の新しいぶどう畑で穴掘り作業を進めていると、穏やかな天候の下、小さな訪問者たちが集い出しました。緑いっぱいの夏になり、新たに植えた530本の2年目の苗も負けじと葉を開きましたが、陽気な訪問者たちの豪快な食欲に少々困惑気味でした。収穫の秋、まだまだ真夏並みの気温は収まりません。でも、たくましい樹に実ったぶどうたちは、豊かに見事な房を着け今か今かと収穫の日を待っています。その数日後、収穫適期を察知した腹ぺこスズメバチ軍団の襲来。ぶどうの粒を両手に抱きかかえ一心不乱に食べる様子は気を許せば可愛く見えるものの、もはや異種格闘技戦的に収穫作業を9月18日と19日の2日間で終了しました。ぶどうを仕込める喜びは年々増すばかりです。多くの訪問者たちは、ぶどうの風味に芳醇さと複雑性が増してきた証。その個性を引き出すための全房樽仕込み・樽熟成に期待感が膨らみます。
ドメーヌ ピノ・リーブル
2020
醸造所横の植栽2年目の幼木畑は、まだ樹の力に差はあるものの、それぞれが自分のペースでしっかりと大地に根を張りました。植栽6年目の畑では、成木となったぶどう樹が大人顔で春の芽吹きを待っています。成木になると新芽をつける力を十分蓄えるのですが、それだけ虫たちの注目の的にもなりました。ぶどうの樹は、年々主幹に樹皮が積み重なり、そこは地上の虫の心地よい冬越しねぐらとなっています。そこで、芽吹き前に手で一本一本主幹の樹皮を削り取るという耕種的な防除法を徹底しました。この地道な手当てで、立派にたくさんの花を咲かせ、ミツバチたちもご機嫌でありました。夏、順調に成長したぶどうには、更なる試練が待ち受けます。招かざる空飛ぶ訪問者たちの熱視線。そこで満を持しての新アイテム、多くのサポーターの方々にご支援いただき購入した“はちネット”の出番です。7月15日から設置したネットの効果は絶大で、フルーツゾーン(果実がついている範囲)はすっぽり覆われ、スズメバチだけでなく他の小さな虫たちの侵入も許すことなく完璧に守ることができました。唯一突破した強者は食いしん坊のヒヨドリです。ただ強行するもネットから出られずパニックに陥るヒヨさんを、何度か救出しては「もう無茶はするんじゃないぞぉ」と、小さな隙間もしっかり閉じて収穫の日を待ちました。地上戦と空中戦を制した2020年、土壌の栄養バランスも非常に良い状態で健全に育ったぶどう果は、神々しく眩いほどの輝きを放っておりました。8月28日から収穫開始。母親(山葡萄)譲りの気品漂う綺麗な酸味と、父親(カベルネソーヴィニヨン)譲りの繊細で深みのある甘味が、バランスよく備わった美しくかつ豊かに成熟した周防大島産ヤマソービニオンを、無事に醸造所へ迎え入れることができました。
ドメーヌ ピノ・リーブル
2021
KATADA畑のヤマソービニオンとヤマブランは、樹齢3年生になりました。生え揃った周りの下草もすっかり畑に馴染んでいます。その小さな花芽が風にゆれると、そこに虫たちが訪れて小鳥たちの集いが開催され、春のぶどう畑はとても賑やかです。UBA畑は植栽7年目ですが、苗木育成期間の2年を足すと樹齢9年生の成木となり、こちらは落ち着いた風貌で優雅に立派なぶどうの花芽を揃えました。5/15に梅雨入りとなり毎日雨が降ったり止んだりでしたが、7/18から8/7立秋までの20日間、つまり大暑の期間に一滴の雨も降らない過酷な日照りが続きました。成木はしっかりと大地に根付いてたくましい様子でしたが、幼木はまだ根の力が弱く、葉が黄色くなったリ落葉しながらも健気に耐えていました。人力によるかん水も焼け石に水で、降雨に勝る薬なしの状況でありました。そこから一転、8/9の台風9号以降は12日間連続降雨と、9/17の台風14号による集中豪雨という極端な気候変動の中で、ぶどうは収穫期を迎えました。幼木ヤマブランは初めて経験する試練に耐え、9/6に収穫の日を迎えることができました。ヤマブランはピノノワール由来の性格からやや雨に弱く病弱な感じが強かったのですが、収穫したぶどうはとても力強く風味豊かで今後の成長が楽しみです。UBA畑の成木ヤマソービニオンの収穫は、2度の台風を乗り越えながら16日間をかけて、成熟の具合をじっくり確かめながら行いました。口に含んだぶどうは昨年よりも深みを増して後味の余韻も長く感じました。今年ほどぶどうにとって気象状況の厳しい年はありませんでしたが、だからこそぶどう樹たちの確かな成長を目の当たりにして、収穫以上に実り多き貴重なヴィンテージとなりました。
ドメーヌ ピノ・リーブル
2022
周防大島でぶどう栽培を始めて10年目、そして、ワイナリーを設立し醸造を開始して5年目となりました。ぶどう樹の水揚げが始まった3月下旬、KATADA畑の土が潤い始めホトケノザの紫色がより一層鮮やかに映る頃、畑の傍らに植わる大きな桜でメジロがチュルチュッとさえずると、隣の梅でウグイスがホーホケキョと流暢な歌声で応えるという幸せな春の景色から今年のぶどう作りが始まりました。生育期には大きな台風が2度訪れましたが、収穫期には雨の日がほとんどなく、9月以降は次第に昼夜の寒暖差が大きくなり、ぶどう達は草刈り機の演奏も聞きながらとても健やかに育ちました。UBAとJINDE畑の立派な樹齢10年生のぶどう樹は、病害や暴風雨にも耐えうる体力がしっかりと備わって、果実のハンギングタイム(ぶどうが樹に生っている期間)を10月初旬の紅葉期まで伸ばすことができました。こうして全ての房をしっかり完熟させて収穫したヤマソービニオンは、身震いするほど良い出来です。房を手に取るとしっとりと柔らかく、一粒口に含めば瞬時に滑らかで奥深い風味が広がります。一房一房収穫する度に確かな手応えを感じ、喜びと感動でいっぱいになりました。つまり、2022年はまさにグレートヴィンテージ!ここから先は、樹齢を重ねるごと風味に奥行と複雑性が生まれ、完熟したぶどうは円熟味を増していきます。自ずと出来上がるワインも力強く味わい深くなるのです。ぶどう樹の成長とともに、自身のワインづくりのサイクルも、より自然で円滑に流れるようになりました。ファーストヴィンテージから一貫して行ってきた「全房発酵によるワインづくりの追求」も、いよいよ機が熟したと実感できる年となりました。
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シセラ
2018
遠い昔、ぶどうを発酵させてワインができました。対して果実を発酵させてつくったお酒は、ラテン語でシセラciceraといいました。Domaine Pinot Livreは、みかんの島と言われる周防大島で「シセラ」と名付けた蜜柑のお酒を造りました。9月下旬ごろから始まる温州みかんの収穫は、極早生から早生、中生、晩生種と3か月以上続きます。大島の恵みいっぱいに実ったみかんから順次収獲、新鮮なうちに果皮の成分もあわせて低温で仕込みます。するとワイン酵母たちがささやき始め、ぶどうとは異なる柑橘ならではの香りや風味をつくり出してくれました。グラスに注いだ琥珀色のシセラは、まるで大島の景色のように時間と共に様々な表情をみせてくれます。2018年、初仕込みのシセラは、可能性未知数の期待感あるヴィンテージとなりました。
シセラ
2019
シセラ誕生2年目。9月の色づき始めた畑には、見てくれなんて気にしないと歌って揺れるたわわに実ったみかんがいっぱいです。シセラ醸造用みかんの収穫は、その鮮度を最優先に考えて、仕込みのペースに合わせ慌てず順繰り収穫します。昨年の経験から得たものは沢山あり、様々な考察から行った仕込みは計18回となりました。みかんのもろみで働くワイン酵母たちが、常に快適温度で過ごせるように発酵室の環境を整えます。発酵終了後は、すべての仕事の終わりを告げる酵母のささやきを聞き逃さないよう五感に集中。そして、極早生から晩生種のみかんを、よりその個性が活かせるシセラに導きました。初穂は、みかん特有の酸を活かすスパークリングシセラに。伝統的な製法でペティアンに仕上げ、新たなシセラの魅力を引き出します。紅差しは、今年のみかんの個性を素直に表現。その収穫時期と共に変化する風味を感じられるように、瓶詰め熟成します。樽熟は、贅沢にフレンチオーク樽で熟成中。子の成長を楽しみに待つ親の心境で、今そっと見守っています。2019年、みかんの果実酒シセラは、わが道を見つけ歩き出しました。
シセラ
2020
シセラの仕込み3年目。前年の豊作年から一転、2020年は収穫量が極端に少ない年でした。みかん栽培においてはとても厳しい年でしたが、シセラ醸造用温州みかんとして年々風味が豊かになってきています。生産はごく少量になりますが、昨年の仕込みから導き出した白ワイン醸造法のシュール・リ―製法を採用することによって、温州みかんの果皮由来の風味が増し、よりその個性を際だたせています。繊細さと奥ゆかしさを最大の特長として、様々な場面で飲み手にそっと寄り添い、余韻で静かに主張する独特のスタイルを確立しました。周防大島油良の畑で、自社栽培したみかんから造りだされるシセラの魅力を少しずつ広めていくためにも、毎年進化を止めないことを決意した2020ヴィンテージです。
シセラ
2021
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